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UNFPA事務局長ナタリア・カネムは、世界人口白書2024の発表に際し、声明文を発表しました。


30年前、世界各国の政府は、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)が世界の開発の礎石であることに合意しました。これは画期的な合意であり、その後数十年にわたる進歩の道を開きました。それ以来、意図しない妊娠の割合は世界全体で20%近く減少しました。近代的な避妊法を使用する女性の数は倍増しました。現在、少なくとも162か国がDV禁止法を採択し、妊産婦死亡数は2000年以降34%減少しました。

 

しかし、その進歩は十分な速さではなく、十分に普及してもいません。ジェンダーに基づく暴力は、事実上すべての国や地域で依然として蔓延しています。2016年以降、妊産婦死亡率の減少はゼロであり、多くのの国々で死亡率が上昇していることが懸念されています。女性の半数近くが、いまだに自分の身体について決定することができず、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)を行使できないでいます。

 

重要な理由のひとつは不平等です。本報告書に掲載された新たな証拠によると、社会経済的な階層や民族を問わず、女性のヘルスケアに対する障壁は時間の経過とともに減少してきていると述べているものの、最も疎外されている女性は、最も改善が遅れています。言い換えれば、世界が最も手の届きやすい人々への支援に力を注いできた一方で、私たちは制度や社会の不平等や格差に向き合うことを怠ってきたということです。

 

どこでも、必要不可欠な性と生殖に関する健康ケアを求める人々は、ジェンダー、経済的地位、民族性、性的指向、障害などのために、重複するハードルを乗り越えることを余儀なくされています。データが収集されている数少ない場所では、アフリカ系の女性は、産科に関する虐待や妊産婦の健康への悪影響に対してより脆弱であることが判明しています。先住民の女性は、文化的に適切な妊産婦保健ケアを拒否されることが多く、彼女たち自身の出産習慣が犯罪化されることもあり、その結果、妊娠・出産時の死亡リスクが著しく高くなっています。ジェンダー不平等な規範は、ヘルスケア・インフラに埋め込まれたままであり、これには女性が大部分を占める世界の助産師の労働力に対し投資が依然として不足していることも含まれます。障害のある女性と少女は、ジェンダーに基づく暴力に最大10倍も多く直面すると同時に、性と生殖に関する情報やケアに対するより高い障壁にも直面しています。LGBTQIA+の人々は、深刻な健康格差に加え、またその結果として、差別と偏見に直面しています。

 

普遍的な性と生殖に関する健康と権利という、カイロで開催された国際人口開発会議の約束を実現するための道筋は明らかです。それを達成するためには、私たちの保健制度と政策から不平等を根絶し、最も疎外され排除されている女性と若者に優先的に焦点を当てなければなりません。

 

私たちは、人権と、何が効果的であるかというエビデンスに基づいた、網羅的で普遍的で包括的なヘルスケアを必要としています。この取り組みは極めて重要であり、公正であり、実行可能です。本報告書には、最も必要としている人々のために合わせた質の高い医療へのアクセスを拡大し、その利用を拡大したプログラムや取り組みの事例が数多く紹介されています。成功を加速させるためには、誰が取り残されているのかを正確に理解するために細分化され、彼ら自身の入力で収集され、かつ安全性が確保されたより良いデータが必要です。

 

フェミニストから先住民グループ、気候変動や若者の活動家に至るまで、多様な人々がすでに公平で共有された未来への道を指し示しています。

 

最終的には、公平な進歩を確保することは、社会全体に利益をもたらすことになります。それ自体が重要であると同時に、より公正でジェンダー平等な世界を実現することで、世界経済に何兆ドルもの利益をもたらす可能性もあります。

 

人類の織りなす布は豊かで美しく、80億本を数える糸からなる織物であり、私たち一人ひとりが唯一無二の存在です。私たちのレジリエンスは、個々の糸からではなく、全体が織りなす集合体から生まれます。それが私たちの強さであり、共に協力し合うことにより私たちが前進し、成功する方法なのです。


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