Go Back Go Back
Go Back Go Back
Go Back Go Back
Go Back Go Back

6月1日 『妊産婦の健康に対する投資の効果:「家族計画2020」と「アフリカの妊産婦死亡削減加速化キャンペーン(CARMMA)」』 シンポジウム開催

Share Icon

イベント

6月1日 『妊産婦の健康に対する投資の効果:「家族計画2020」と「アフリカの妊産婦死亡削減加速化キャンペーン(CARMMA)」』 シンポジウム開催

calendar_today 01 6月 2013

location_onworldwide

6月1日 『妊産婦の健康に対する投資の効果:「家族計画2020」と「アフリカの妊産婦死亡削減加速化キャンペーン(CARMMA)」』 シンポジウム開催

2013年6月1日(土)~3日(月)に、横浜を会場に第5回アフリカ開発会議(TICAD V)が開催されました。アフリカ54カ国のうち51カ国が参加したこの国際会議は、「裾野の広い中間層の創出を後押しし、アフリカ大陸を世界成長の原動力に変容させる」ことなどを盛り込んだ「横浜宣言2013」を採択し、閉幕しました。

初日となる6月1日(土)、パシフィコ横浜において、第5回アフリカ開発会議(TICAD V)公式サイドイベントとして、外務省、アフリカ連合(AUC)、国連人口基金(UNFPA)、アジア人口・開発協会(APDA)、国際家族計画連盟(IPPF)及びジョイセフの6団体共催でアフリカの妊産婦の健康に対する支援について考えるシンポジウムが開催されました。登壇者は福田康夫元首相、エレン・サーリーフ大統領(リベリア)、ジョイス・バンダ大統領(マラウイ)、ババトゥンデ・オショテイメインUNFPA事務局長、テドロス・アダノム外相(エチオピア)、テウォドロス・メレッセIPPF事務局長、阿部俊子外務大臣政務官の7人。総合司会はジョイセフの冨永愛アンバサダーが務めました。

 

2011年のノーベル平和賞を受賞したエレン・サーリーフ大統領と2013年TIME誌の 「世界でもっとも影響力のある100人」のひとりに選ばれたことでも記憶に新しいジョイス・バンダ大統領という、世界が注目する2人のアフリカの女性大統領が顔を揃えたこともあり、300人を超える方が来場。立ち見がたくさん出るほどの大盛況でした。メディアも国内外から10社 を超える記 者が取材に訪れ、この問題に対する関心の高さがうかがえました。

シンポジウムは冨永愛アンバサダーの司会から始まり、前回のTICAD Ⅳで 議長を務めた福田康夫・元内閣総理大臣のスピーチへと続きました。福田元首相はスピーチの中で、日本として今後もアフリカへ継続的な支援に取り組む必要性を訴え、MDG5(妊産婦の健康の改善)の重要課題とされる家族計画の促進こそがアフリカの経済促進のカギを握ると語りました。

 

 

 

続くエレン・サーリーフ大統領は、世界で毎年28万人を上回る妊産婦が死亡していることに触れ、そのうち56%がアフリカのサハラ以南で起きていることを伝えました。その解決のためには、今よりさらにスピードを上げ、家族計画の普及に努め、改善を図る必要性があることを訴えました。

 

さらに、マラウイのジョイス・バンダ大統領も、自国の妊産婦死亡率を1990年の10万件あたり1100からこの20年間で460へと大幅に削減した実績に触れつつも、「MDG5の実現のために、出生10万当たり115まで減らさなければならない」と述べ、目標達成のためにもさらなる支援を訴えました。

 

 

各ゲストのスピーチの後に行われたパネルディスカッションでは、オショティメインUNFPA事務局長がモデレーターを務め、アフリカは避妊薬に対する満たされないニーズに応えることで妊産婦死亡を削減できるにも関わらず、昨今家族計画への支援が減少傾向にあると指摘しました。また、家族計画は命を救うだけでなく人々の健康改善につながり、地域社会が強化され、経済成長を促すと指摘し、さらに各国政府と開発パートナーは家族計画事業の実施公約と資金を倍増すべきであると言及しました。さらに事務局長は、いかなる女性も出産で死亡してはならないと強調し、国連人口基金はアフリカでの妊産婦健康改善プログラムを引き続き支援していくことを国際社会に保証しました。

 

ディスカッサントの一人、エチオピアのテドロス・アダノム外相は、アフリカの妊産婦及び子どもの健康を支援するための資源を活用するためのメカニズムの構築の必要性を述べ、特に出産立ち会いや緊急産科などのサービスへのアクセスを増やすために健康に関わる人的資源に対するさらなる投資が必要である旨強調しました。また、 テウォドロス・メレッセIPPF事務局長は、ポストMDGにおける家族計画の重要性に触れ、地域社会や市民社会団体が果たす役割が大きいこと、女性の健康への投資による経済効果の高さを指摘し、パネルディスカッションでは、健康の改善、教育の普及、そして家族計画 を浸透させるために継続的な支援を行うことが、妊産婦死亡率削減につながるということが繰り返し強調されました。

アフリカで家族計画を浸透させるということは、多産が多いアフリカの女性が、自ら、子どもを産む人数やタイミングを決定することにつながり、今なお高い人口増加率を抑えることにもなります。また、出産間隔をあけることで女性の体の負担を軽くできるため、妊産婦死亡率の削減に効果があると考えられています。

質疑応答のセッションでは、会場いっぱいの参加者からのご質問が寄せられ、中でも福田元総理夫人からは、アフリカにおける家族計画を推進するために日本の母子手帳システムの導入提案がなされました。

 

これらの意見に応じ、阿部俊子政務官は日本政府として、この問題に対して積極的に取り組む考えを述べ、解決へ向けて継続的な支援に努めることを約束し、シンポジウムは閉会しました。

シンポジウムを通じて印象的だったのは、「出産は本来祝福されるべきものなのに、そうではないアフリカの現実」と向き合う各代表の悲痛な思いでした。妊産婦死亡率の削減には妊産婦自身の健康の向上はもちろんですが、地域住民に家族計画への理解を求め、女子教育の重要性を伝え、アフリカ全体に横たわる貧困問題に取り組んで初めて、たどりつける果てしない課題があります。各代表が繰り返し訴える「継続的な支援の必要性」に対して、日本はどのように応えることができるのか。改めてじっくりと考えさせられる1時間半でした。

 

英語版記事はこちら                                                        Photos by GOTO AKI