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今年は、1994年の国際人口開発会議(ICPD)から30周年を迎えます。

これは、すべての人のための性と生殖に関する健康と権利を達成するために、私たちがどれほどの道のりを歩んできたのか、振り返る機会となります。

ICPD行動計画が採択されて以来30年間、性と生殖に関する健康と権利を実現するための努力は、大きな成功を収めてきました。カイロで採択された画期的なICPDのビジョンは、目覚ましい進展を促し続けています。

2000年から2020年の間に、妊産婦死亡率は34%減少しました。また1990年から2021年にかけて、近代的な避妊薬・具を使用する女性の数は倍増しました。15歳から19歳の少女の出産は、2000年以降、およそ3分の1減少しました。歴史的に162か国がDVを禁止する法律を制定しました。そして重要なことは、からだの自己決定権が世界中で続々と実現されていることです。これは、祝福されるべき、大きくかつ急速な規範の変化といえます。

 

しかし、多くの人々が依然として取り残され続けています。ジェンダー、人種、国籍、その他多くの要因に関連する権力と機会の差が、今もなお人々の人生の選択を大きく制限しています。

莫大な富があり、性と生殖に関する健康における解決策も実証されている世界において、このような格差は、アイデアや資源の不足ではなく、意志が不足していることを示唆しています。1994年以降、世界の健康と権利の概念は変化し、その基準はより高いものとなっています。不平等がどのように機能するかに関する新たな理解が、隠されていた体系的な不正義を浮き彫りにしました。本報告書では、社会経済的地位や民族性が、性と生殖に関する保健サービスや情報へのアクセスに与える影響について、多くの国々で独自に調査しています。人種間の格差は、植民地時代の名残であることが多いですが、保健制度内にも根強く残っており、全ての人の生殖に関する健康の権利を実現するためには、これを是正しなければなりません。

 

今こそ、こうした不公平に終止符を打ち、私たちが共有する未来の基盤を強化する時です。不平等の根本原因に対処するために、医療制度は、単に人々を治療するだけでなく、人々に力を与え、彼らの多様性に対応し、権利とからだの自己決定権を尊重するサービスを提供する方向に進まなければなりません。一方で、解決策は医療制度の枠にとどまりません。真の平等を達成するためには、最も取り残されている人々が直面している制度的不平等に、経済的、社会的、政治的に正面から取り組まなければならないのです。

 

進歩はしています。しかし、遅すぎるのです。 持続可能な開発目標が設定した目標を達成するためには、十分な資金と制度改革によって、私たちのコミットメントを裏付けなければなりません。平和で、強靭で、公正な社会は、排除されることなく、健康でエンパワーメントされた人々の手によって実現されるのです。

2024年の「世界人口白書」は、不平等をなくし、すべての人にとってより公正な未来を創造するためには、最も取り残されている人々の権利と選択肢を確保するために、今すぐ行動を起こさなければならないと主張しています。