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マラウイ・ンサンジェ:ンサンジェ県のテンガニ避難キャンプに住む人たちにとって、2022年は生涯忘れられない年となるでしょう。今年1月、熱帯低気圧「アナ」が住宅を倒壊しながらコミュニティを直撃した後、1,000世帯以上が避難先を求めてキャンプに向かいました。

 

何週間もの間、着の身着のまま避難してきた人たちは、人道支援団体が設置したテントに宿泊せざるを得ませんでした。状況が元に戻り始めたとき、今度はサイクロン・ゴンベが襲来し、避難民たちが今では「ホーム」と呼ぶキャンプを破壊してしまいました。

 

「風がとても強く、テントが空へ飛ばされてしまいました」と、テンガニ避難キャンプのマネージャーを務めるマックスウェル・バンダさんは当時を振り返りました。「木の下に一次避難できる場所を探そうとしましたが、無駄でした。土砂降りの中、一晩中びしょ濡れになって立っていました」

避難民のシェルターとして使用されているテント内部を視察するUNFPAマラウイ事務所副代表の渡部(左)と政府関係者。©UNFPA/Joseph Scott
避難民のシェルターとして使用されているテント内部を視察する
UNFPAマラウイ事務所副代表の渡部(左)と政府関係者。©UNFPA/Joseph Scott

二度の災害の悲劇

いくつものテントが飛ばされたり、半壊したりしてしまったことで、テンガニ避難キャンプではさらに多くの人の避難場所が必要となり、住民たちは絶望感に襲われました。熱帯低気圧アナによる最初の災害では1,325世帯がキャンプに避難していましたが、サイクロン・ゴンベがこの地域を襲った後、その数は1,506に膨れ上がりました。

 

「避難してきた人たちはほかに行く場所がなかったので、私たちには彼らを追い返すことはできませんでした」とバンダさんは言います。「ほとんどの人が、サイクロン・ゴンベに家を壊されました。今問題なのは、眠るためのスペースがないことです」

 

スペース不足が深刻になったことを受け、避難キャンプの運営委員会は、関係当局からのさらなる支援を待つ間、女性と子どもたちは残った数少ないテントに寝泊まりし、男性たちは外で寝ることを決めました。厳しい状況が続く避難所で平穏を保つためには、セキュリティをより強化する必要があり、テンガニ避難キャンプでの避難人口の急増は懸念事項となっています。

 

「新しい避難者が増えたことで、キャンプのセキュリティに問題が出てくることを私たちは認識しています」とバンダさんは言います。「男性も女性も、少年少女でさえも、屋外で寝泊まりしていました。そのため、地元の警察は一晩中キャンプを警備しなければなりませんでした」

 

マラウイでは、少女と女性に対する暴力が広がっており、女性の3分の1は15歳になる前に性暴力を含むさまざまな形態の暴力を経験しています。また、女性と少女が暴力被害にあうリスクは災害時に高まるため、人道危機下では、ジェンダーに基づく暴力を予防し対処するための迅速な行動が求められています。

 

キャンプでの”セーフスペース”の試験的導入

欧州連合(EU)の支援で進められている「スポットライト・イニシアティブ」を通じて、同地域の既存プログラムのメンターたちがすぐに派遣され、コミュニティと避難キャンプでジェンダーに基づく暴力(GBV)に関する啓発活動に積極的に従事しました。これまでに、キャンプ内に40か所の「セーフスペース」が設置され、最も脆弱な立場に置かれた思春期の少女たちなど2,266人が支援を受けました。

 

メンターたちはまた、女性に対する暴力のリスク、月経衛生や家族計画を含むリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)について隔週でセッションを行っており、それにより同地域の一貫した支援ネットワークと患者紹介システムが確保されています。

 


コミュニティで行われたイベントで、セーフスペースのメンターと助言を受ける少女たち
©UNFPA/Joseph Scott

 

テンガニ避難キャンプでセーフスペースの支援を受けている少女の1人が、19歳のサライ・チャールズさんです。中等教育1年目のサライさんは、(ほかの少女たちと同様)着の身着のままキャンプに避難してきて、それが彼女たちを暴力の標的となる状況に置いていると話しています。

 

「この厳しい状況を利用して、食べ物と引き換えに関係を迫る男性たちもいました」とサライさんは言います。

 

しかし、キャンプ内に「セーフスペース」ができたことで、少女たちはエンパワーされ、性暴力やジェンダーに基づく暴力がどのようなものであるか学び、キャンプでそのような状況に遭遇した場合、どこに報告したらいいかについても知ることができました。

 

「『セーフスペース』を通じて、私たちは今、あらゆる形態のジェンダーに基づく暴力についてわかるようになりました」とサライさん。「キャンプ周辺の男性たちもまた、どんな形態であれ私たちを虐待しようとしたら、すぐに警察に通報されるということを知っています」と続けました。

 

UNFPAマラウイ事務所副代表の渡部正樹は、テンガニ避難キャンプを訪問した際、「セーフスペース」の試験導入は、現在のンサンジェの人道ニーズに対応するためにスポットライト・イニシアティブの下で実施されたものだと述べました。さらに、避難キャンプとホストコミュニティの女性と少女たちのGBVに関する意識向上を踏まえ、このアプローチが有効であると続けました。

 

「気候関連のショックや脅威に対する地域社会のレジリエンスを支援し、人道と開発の連携(ネクサス)を進めていくため、私たちは今回のようなサポートを拡大していきたいと考えています」と渡部副代表は強調しています。「そうすることで、援助関係者やサービス提供者から女性への潜在的な暴力を含め、キャンプという状況で起こり得るジェンダーに基づく暴力と性的搾取や虐待のリスクを、より軽減することができます」

 

 

本文は当該記事を、駐日事務所にて翻訳・編集したものです。

 

 

 

 

 

 

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