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モルドバ・キシナウ:心理士のナタリア・ガンドラブルさんはこの日、いつも働いている「ユース・フレンドリー・ヘルス・クリニック」(UNFPAがサポートする全国41か所の診療所ネットワークを構成するクリニックで、特に心理社会的サポートを提供)ではない場所で、ケアの仕事にあたっていました。この日彼女が訪れていたのは、1か月前にロシアのウクライナに対する侵攻が始まって以来、旧映画館と旧大学寮を利用して設置されたウクライナ難民のための避難所2か所でした。

 

「難民たちは恐怖と不安を抱えています。泣く人もいれば、眠れない人もいます。物音に対して過剰な反応を示す人もいます。特に子どもたちなどに顕著です。戦争のトラウマは、すべての人々を追い詰めています」とナタリアさん。「彼らは『なぜ私たちなの?』『私たちが何をしたと言うの?』『私たちは家に帰れるの?』と聞いてきます。どこへ行けばいいのか、別の国へ行くべきか、ここにとどまるべきか、わからずにいます」

 

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2月24日以降、360万人以上がウクライナから国外に逃れています。モルドバ内務省によると、37万人以上が入国し、約10万人が国内に滞在、残りはルーマニアやその他の国へとさらに移動しています。UNFPAは、キシナウにある6つのユース・クリニックに、情報資料と2,000個のディグニティ(尊厳)キット(抗菌石鹸、歯磨き粉、洗濯洗剤、生理用品、マスクなどの必需品を含む)を提供し、難民センターの女性たちに配布しました。

 

2人の子どもを連れてウクライナを離れたナディアさんと心理士のナタリアさん。家族はモルドバの首都キシナウの避難所に滞在しています。© UNFPA/Siegfried Modola
2人の子どもを連れてウクライナを離れたナディアさんと心理士のナタリアさん。
家族はモルドバの首都キシナウの避難所に滞在しています。© UNFPA/Siegfried Modola

心理士のナタリアさんは、えんじ色のダウンジャケットの上に緑色のUNFPAとユース・クリニックのベストを身に着け、難民女性のひとりナディアさんに話しかけました。この時、ナディアさんの2人の子どもたち、ヤロスラフさん(12歳)とズラトスラヴァさん(7歳)は、カラー粘土で遊んでいました。また別の場所では、オルガさんという別の難民女性が10歳の息子とともにいました。「妻たち、母親たちは一人で国境を越え、ウクライナ国内に残っている夫のことや、この状況にどう対処したらいいかなど、多くの不安を抱えています」とナタリアさんは語りました。ナタリアさんは、難民と面会し、ケアを行っている45人の心理士とソーシャルワーカーのひとりです。「10歳の男の子はトラウマに悩まされています。彼は同年代の子どもたちや、時には母親とも交流しません。母親が泣くと、彼の心の傷は悪化してしまうのです」ーー。

 

「やさしさと思いやりのある支援」がオルガさんの心を癒してくれました。「ナタリアさんのアドバイスは、恐怖と無力感の状態から私たちを救ってくれています」とオルガさんは話しました。

 

より専門的な支援が必要とされる場合、ナタリアさんは難民の人たちに診療所へ来ることを勧めています。そこでは産婦人科医、皮膚科医、泌尿器科医による相談も提供しています。難民の人々はまた、どこでパスポートを入手できるか、安全を求めて国境付近にいる親戚を助ける方法はあるかなど、事務的な情報も必要としています。

 

「この(危機の)すべてが終わり、生活を取り戻すという希望を持って、彼らはここにやってきました」「しかし、すぐには終わりが来ないことを知っています」と、ナタリアさんは話しています。

 

本文は当該記事を、駐日事務所にて翻訳・編集したものです。

 

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