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2021年9月29日ハノイ:高齢者とその家族、介護者などを対象にしたヘルスケア情報を無料提供する初のスマートフォンアプリ「S-Health」の運用がベトナムで始まります。このアプリは8か月の試用期間を経て正式に運用されるもので、信頼性と利便性の高いこのアプリを通じ、ヘルスケアに対して高まるニーズに応え、高齢者がデジタル化の恩恵を受けられるように支援します。

国連人口基金(UNFPA)はベトナム保健省の協力のもと、スマートフォンアプリ「S-Health」の運用を正式に開始しました。このアプリは、特に人道危機や災害時に、社会的に脆弱な立場に置かれる高齢者のために開発されたもので、新しい遠隔医療の基盤を提供しています。

 

UNFPAベトナム事務所による技術支援と日本政府の資金援助を受けて、ベトナム保健省がこのアプリを開発し、機能を向上させました。誰でも健康に関する基本情報を見つけることができ、特に高齢者が医療ケアに関する情報を得ることができるよう、利用者が使いやすい仕様になっています。

 

高齢者向けとしてベトナム初の遠隔医療用アプリとしてのS-Healthは、高齢者の共通疾患、良質で適切な栄養維持の方法に関する知識、高齢者のケアの仕方について、最新情報を提供します。また、このアプリには、高齢者が毎日の健康指標をモニターできる機能が搭載されており、アップグレードして、服薬や健康診断のスケジュール管理機能を追加することもできます。

 

また、高齢者のアクセスを確保するため、家族で繋がることができるようにアプリの機能が改善されました。これにより、ユーザーとしての高齢者がアプリを利用することで、家族にも健康に関する情報が共有され、高齢者の健康管理をする手助けを、家族が遠隔で行うことが可能になりました。

 

さらにこのアプリは、高齢者へのケアサービス提供を改善するため、かかりつけ医のネットワークと介護施設を繋ぎ、平時だけでなく緊急時にも「誰一人取り残さない」ことを目指しています。デザイン上の配慮もなされ、アプリのコントラスト(明暗)やカラー(色調)は、どの年齢層でも使えるように設定され、高齢者でも簡単に使うことができるものとなっています。

 

新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、高齢者にとても大きな影響を与え、その結果、社会における高齢者の健康と人権が大きな課題となりました。新型コロナウイルスは年齢を問わず感染が拡大していきますが、高齢者と基礎疾患のある人々は重症化しやすいリスクを抱え、他の年齢層に比べて死亡率は高くなります。高齢者の死亡率については、80歳以上では世界平均よりも死亡率は5倍近く高くなることが分かっています。

現在、ホーチミン市をはじめ多くの地区では、新型コロナ感染症における複雑な状況下にあり、高齢者とその家族は、高齢者自身や基礎疾患を持つ家族を感染症から守るために苦慮しています。そして、医療やケアサービスを途切れさせないことに対するニーズは、これまで以上に重要になってきています。このような背景から、S-Healthの果たす役割が期待されています。

 

UNFPAベトナム事務所長の北原直美は、S-Healthを正式に発表し、ヘルスケアのスマートフォンアプリを使うことは、遠隔医療にとって欠かせない解決策であることを強調しました。「S-Healthアプリとともに、デジタル技術を基により多くのイノベーションが生まれ、それによってベトナムの持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた取り組みを加速させることに大きな期待をよせることができると信じています。UNFPAは、女性、女児、若者や高齢者を含む社会的に脆弱な人々を守るために、デジタル技術の開発と応用に関する支援を継続していきます」と、北原は述べました。

 

2021年のEricsson社の報告によると、高齢者によるインターネット使用率は、新型コロナウイルス感染症が始まって以降、世界中で格段に増え、その傾向は60歳から69歳までの若年高齢者において顕著でした。この年齢層では、インターネット利用率が2015年時点で62%だったのに比べ、2020年は80%以上となりました。また、2019年のベトナムの高齢化に関する国家調査によれば、高齢者の携帯電話保有率は農村部で93%、都市部では97%と報告されています。つまりこれは、10人に4人の高齢者が携帯電話を所持していることを示しています。

 

2019年、世界の高齢者(65歳以上)人口は7億300万人でした。この数は今後30年で倍増し、2050年には15億人に達すると予想されています。ベトナムは世界でも高齢化が最も加速する国々のうちの一つに数えられており、2036年までにベトナムは高齢化社会を迎え、60歳以上の高齢者人口は全人口のほぼ5分の1に相当する2130万人に膨らむ見込みとなっています。高齢化とデジタル化は、世界のメガ・トレンドの一部であり、私たちはこの流れに対応していかなければなりません。

 

本文は当該プレスリリースを、駐日事務所にて独自に翻訳及び編集したものです。

 

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