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2022318日、ハノイスマートフォン用アプリ「幸せで健康な母と子」(MCH247)の使用により、ベトナムのお母さんたち、特に農村部や遠隔の省に住む少数民族のお母さんたちは(病院などの施設に出向かなくても)それぞれの居住地域からリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)についての情報やサービスを受けられることになります。このアプリは、女性が妊娠や出産を含むリプロダクティブ・ヘルスを適切に管理し、子どもの発育や予防接種の予定なども確認することができます。

 

ベトナム政府保健省母子健康局と国連人口基金(UNFPA)は18日、スマートフォン用アプリ「幸せで健康な母と子」(MCH247)を公式に発表しました。本アプリ(iOSAndroidWindows対応)の開発は、UNFPAとベトナムのNGOであるCCIHPの技術支援、日本政府の資金援助によって実現しました。現在実施されている政府による遠隔医療イニシアチブの一環で、コロナ禍でもリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)についての情報やサービスが途切れることなく提供され、利用者に活用されることになります。

 

アプリは、同国のバクニン省、ホアビン省、ソンラ省、バクカン省でパイロット事業としてすでに導入されており、少数民族や移民が居住する地域を中心に全国展開される予定です。

 

保健省母子保健局のチャン・ダン・クォア副局長は、長期的かつ複雑なパンデミック下においても、リプロダクティブ・ヘルス関連の情報とサービスの提供を保証するための取り組みとして、MCH247アプリが大きな貢献を果たすとの認識を示しました。

 

チャン・ダン・クォア氏は開始式で「保健省は、村の助産師を含む医療従事者がケアを必要とする人々に対して包括的な情報やサービスを届けるための基盤の架け橋のような存在となる、このデジタルツールの開発を支援してくれたUNFPAと日本政府に感謝しています。移動制限やソーシャル・ディスタンスが求められる新型コロナの状況において、特に女性にとって役立つツールだと言えます。そして、これは私たちがパンデミック後においても『誰一人取り残さない』ことを確かなものにするための努力の一つです」と強調しました。

 

また、UNFPAベトナム事務所は同日、遠隔医療イニシアチブに欠かせない電話・ビデオ会議用の機材一式を母子保健局に供与。これらの機材は、保健省が各地域の省当局に対して、リプロダクティブ・ヘルスについて監督と技術支援を行い、能力開発に特化した研修を実施し、リプロダクティブ・ヘルスに係る規定基準やガイドラインに沿って技術指導することを可能にするものです。

 

式典に参加したUNFPAベトナム事務所代表の北原直美は、新型コロナによってベトナムの保健システムが逼迫したが、パンデミックの最中でも妊産婦や脆弱な人々のために、基本的なリプロダクティブ・ヘルスのサービス提供が継続される必要性を強調。妊産婦はコロナ禍において産前健診を延期または中止する傾向があり、妊娠関連の合併症の早期発見が難しくなることから、多くの女性にとってリスク因子となっています。

 

北原は、「日本政府の資金援助のおかげで、UNFPAMCH247アプリを保健省と共同開発したことを光栄に思います。現行の遠隔医療イニシアチブの一環ですが、特に少数民族の人々のリプロダクティブ・ヘルスに特化したものです。パンデミック禍でも妊娠はあり、女性は妊娠関連のケアを継続的に受ける必要があります。私たちは、オンライン診療を促進し、省レベルで能力開発を目的とした技術的監督と支援を実施し、全国においてリプロダクティブ・ヘルスの質の高いサービスを継続して提供できるように、新たな技術を見出しました。通常、保健省によるスキル向上のための研修を支援していますが、新型コロナによって対面での実施が困難なため、ビデオ会議の設備を整備する方針を取りました。」と述べました。

 

UNFPAは、保健省がMCH247アプリを管理した上で、全国的にアクセスを可能にし、それによってベトナムでの妊産婦死亡を可能な限りなくすことに貢献できるよう支援を継続します。女性が産後に命を落とすことはあってはなりません。

 

補足事項:

  • UNFPA2020年に実施した分析によれば、ベトナムの妊産婦死亡率が新型コロナによって44%から65%増加する可能性が示唆されています。このデータはまさに、パンデミックにより多くの女性が妊娠や出産に関連する原因で死亡する可能性があることを示し、ベトナムが過去20年間で達成した発展を後退させ、また、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を脅かすことに繋がるとして、UNFPAは警鐘を鳴らしています。
  • 2020年のベトナムにおけるスマートフォン利用率は、全人口の63.1%であり、世界9位に位置けられています(Statista調べ)。また、20201月時点で、ベトナムのインターネット利用者は70%を占めました。携帯デバイスを通じたインターネット利用者数は約95%に達し、平均利用時間は3時間18分(Appota調べ)。少数民族が居住する60の貧困地域(コミューン)で2022年に実施したUNFPAの調査では、55%の少数民族出身の女性が携帯電話を所有し、41%がスマートフォンを使ってインターネットにアクセスしていることが分かりました。新型コロナのパンデミックの状況とインターネットおよび携帯電話の高い利用率を受け、モバイルアプリの開発と遠隔医療設備の促進が可能になりました。これには、リプロダクティブ・ヘルスのケアが新型コロナや他の緊急事態で中止されてしまわないことも目的としています。

 

問い合わせ先:

UNFPAベトナム事務所 

コミュニケーション・オフィサー

ディン・トゥ・フォン(Ms.

メール:dhuong@unfpa.org 電話:0913301539

 

本文は当該記事を、駐日事務所にて編集したものです。