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ジュネーブにおいて3日間にわたり行われた「ヨーロッパ人口問題フォーラム2004」では、人口およびリプロダクティブ・ヘルスの専門家が集まり、ヨーロッパの人口動向による影響および国際人口・開発会議(ICPD, 1994年)の行動計画に対する世界的取り組みについて検討がなされた。参加者達は地域の人々の生活向上を目指し、10年前に採択された20カ年計画であるカイロ行動計画実施の重要性を強く主張した。

このフォーラムは、スイス政府が主催し国連欧州経済委員会(UNECE:United Nations Economic Commission for Europe)および国連人口基金(UNFPA)の共催により行われ、350名以上が参加した。これはICPDから10年を記念する地域会合の一環として行われたものである。フォーラムで協議された事項は、少子化問題、高齢化、労働人口の減少、移民、高い疾病率および死亡率など、地域の多様性を反映するものであった。特に、コーカサス地方、中央アジア地域、ヨーロッパ域内の移行経済国家が直面している社会、経済、健康問題に注目が集まった。

閉会にあたり、スイス連邦統計局ワーナー・ハウク副次長はフォーラムの主な結論を要約し、「HIV/AIDSおよび他の性感染症が拡大している地域において、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブ・ヘルスを十分に遂行するためには、若者のエンパワメントが最優先課題である」と述べ、「リプロダクティブ・ヘルス・プログラムの中に、HIV予防と治療を統合させることが必要である」と強調した。フォーラムでは更に、不法買売春や強制労働、ジェンダーに基づく暴力なども課題として挙げられ、移行経済国家における優先課題として医療施設の未整備(特にリプロダクティブ・ヘルス情報ならびにサービスなどへのアクセスの不足)が指摘され、信頼できるデータ・システムに欠けていることも医療向上を妨げている要因であると認識された。ある国では妊産婦死亡率および危険な人口妊娠中絶率が非常に高く、一方で少子化が多くの国での重要な政策課題とされたことなども明らかになった。更にジェンダー平等の重要性も強調され、男性および高齢者の育児参加を推進する国家政策をもつ国の例が発表された。

労働力における少子化の影響はヨーロッパのほとんどの国における課題である。ヨーロッパ域内の数カ国では、今後50年間に労働人口の急激な減少と年金受給者・退職者の増加に苦しむことになる。更なる移民の受け入れを認めることが労働力不足の問題を解決するという主張もあったが、それは解決策のごく一部でしかないだろう。国際的人口移動は、グローバル化社会でより重要な資源となる一方、明白で、かつ地方・国家・地域レベルで充分に調和のとれた移民政策・社会統合政策が必要となる。充分な人口資源およびリプロダクティブ・ヘルス・プログラムの欠如は、ジェンダー平等およびリプロダクティブ・ヘルスケアへの普遍的アクセスを2015年までに達成するというカイロ行動計画を実施する上で大きな障害となりうる。フォーラム参加者達は、人口問題およびリプロダクティブ・ヘルスのためのヨーロッパによる継続的な資金調達が「開発」にとって鍵であると強調した。というのは毎年、これらのための国際的支援がカイロ行動計画で合意された額に対して30億ドル近くも不足しているのである。このフォーラムでは更に、カイロ行動計画の実行が2015年までに世界の貧困を半分にし HIV/AIDSの拡大を縮小させるとするミレニアム開発目標を達成するに不可欠である確認された。特に健康および社会改善を現在進めている移行経済国家においては、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブ・ヘルスへの資金がより必要なのである。

フォーラムの閉会にあたりトラヤ・オベイド国連人口基金事務局長は、「我々の第一の目標は、全ての人々、すなわち男性、女性、子どもの生命を守り、彼らの安全でかつ健康な生活を導くものでなければならない」とし、「人権、適切な資源および効果的政策に裏打ちされた、より強固な政治レベルでの貢献が人類への普遍的な希望をかなえる鍵となる」と述べた。

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